【ゆっくり解説】任天堂のインタラクティブミュージックを巡る part1 & 1.5 仕様概要
jyujyura8592155.hatenablog.com
前回の記事は動画に対する自分の思いなどを中心に語ったが、今回は具体的な動画内容について取り上げていく。音楽を題材にする以上は動画の方が媒体として向いていると思って解説動画を作ったわけだが、仕様などについて動画を見た人が簡単に振り返れるように文章にも残しておこうと思ってこの記事を書くことにした。せっかくそれなりの時間をかけて調べ上げた内容なのでそれなりの価値があると信じて(需要はほとんど無いだろうが)この記事を残しておく
スーパーマリオワールド - ヨッシー乗り降り
ゲームのBGMが変化するというと真っ先に例に挙がるのがこのヨッシーの乗り降り。元のBGMにパーカッション(主にボンゴ)が加わることでBGMのリズム感が変化する。ヨッシーに乗ることで操作感が変化し、プレイ体験が大きく変化することを表現する機能的役割が大きい
ヨッシーに乗ることで変化するBGMは一緒について来てくれないお化け屋敷とお城・砦を除く地上、アスレチック、地下、水中の4つ
スーパーマリオ ヨッシーアイランド - マップ画面
ワールド1~6まである中でワールドをクリアするごとに、マップ画面のBGMが徐々に豪華になっていく。基本的には楽器が一つずつ増えていくことで大規模編成になってプレイヤーの気持ちを盛り上げてくれる。マップ画面が映像として代わり映えしないため、BGMで盛り上げることで終盤に向かっていることを表現している。参考までにそれぞれのワールドの楽器を下に記す
- ワールド1:アコースティックベース、オルガン
- ワールド2:アコースティックベース、オルガン、ボンゴ
- ワールド3:アコースティックベース、オルガン、ボンゴ、ストリングス
- ワールド4:アコースティックベース、オルガン、ボンゴ、ストリングス、エレキギター
- ワールド5:ピックベース、オルガン、ボンゴ、ブラス、エレキギター
- ワールド6(ED前):ピックベース、リコーダー、ボンゴ、ブラス、エレキギター
- ワールド6(ED後):ピックベース、リコーダー、ボンゴ、ブラス、エレキギター、ストリングス、ピチカート
スーパーマリオ ヨッシーアイランド - ワタボー
ワタボーに触れることで画面がグニャグニャになり、それに合わせてBGMも変な感じになる。元のBGMからBPMが下がり、ピッチも音の終わりにかけて急上昇する。変化するのはワタボーが登場するステージで流れるアスレチック、ちじょう(2つ目の地上BGM)の2つ。変化が滑らかなことから恐らくMIDIのデータを機械的に制御しているものと思われる
スーパーマリオ64 - ウォーターランド
ステージの場所によって地上ver.と水中ver.と洞窟ver.に変化する。地上ver.がEピアノのみで静かなイメージなのに対し、水中ver.はそこにストリングスが加わり音が一気に厚くなる。一方で洞窟ver.はドラムの軽快なリズムが特徴的。それぞれマリオの操作感を意識したBGMの変化と思われる
かいぞくのいりえでは文字通りの場所で曲が変化するのに対し、ウォーターランドでは最初の渦巻きのあるエリアでは地上ver.が流れ、そこからクッパの潜水艦があるエリアに向かう水路で水中ver.に変化。そこから潜水艦のエリアで陸に上がると洞窟ver.に変化する。ただしウォーターランドでも海賊船の内部は狭い空間のためか地上ver.が流れ、宝箱の謎を解いて水が引くと洞窟ver.に変化する
また、この曲が流れるピーチ城内の水中ステージ「おさかなといっしょ」は常に地上ver.が流れ、変化はしない
スーパーマリオ64 - やみにとけるどうくつ
通常ver.と特定エリアver.の2パターンが存在。通常ver.が地下BGMを奏でるスラップベースの音が特徴的なのに対し、特定エリアver.は洞窟の空洞音のような低い音が主となる
やみにとけるどうくつではドッシーのいる地底湖とケムリめいろが、みずびたシティーではダウンタウンが特定エリアに設定されている。なおみずびたシティーではダウンタウンに向かう水路の途中で特定エリアver.に変化する。
スーパーマリオ64 - テレサのホラーハウス
曲が流れ始めてから数十秒は特に変化がないが、その後は屋外ver.と屋内ver.の2つに分かれる。屋外ver.が風切音のような低音が主なのに対し、屋内ver.はプレイヤーを惑わすかのような音階楽器の音が聴こえてくる。文字通り屋外か屋内かが変化の条件だが、動画でも紹介した通り、屋外でドアのそばに寄っても屋内ver.に変化する。
スーパーマリオ64 - メリーゴーランド
テレサのホラーハウスの地下にある部屋で楽しげな音楽が流れている。部屋の外にいるときは部屋の中から音が漏れ出ているかのような小さい音量で音楽が聴こえているが、部屋に入ると音量が急に大きくなる
最近のゲームだと音源とプレイヤーの位置関係によって音の聴こえ方がリアルタイムで変化するような仕組みが実装されているものも多いが、これはドア移動を挟んで音量を変化させるというシンプルな仕組み
ゼルダの伝説 時のオカリナ - ロンロン牧場
メロディがマロンの歌声のため、話しかけるとメロディが途切れる。皆さんご存知の通り、この曲はエポナの歌のアレンジであり、ゲームの世界に存在する音楽であることを強調するためこのような仕様となっている
またマロンから離れすぎるとマロンの歌声の代わりにハーモニカがメロディを奏で始める。マロンがメロディを奏でることで、エポナの歌がゲーム世界に存在するものということを表現すると同時に、音楽として物足りなさを感じさせないようにマロンから離れたらハーモニカでメロディを代用する
ゼルダの伝説 時のオカリナ - 競馬
インゴーと競馬の勝負をするときに流れる音楽。ゴールしたときに流れるファンファーレが別の曲としてではなく、競馬中に流れている音楽のアウトロとして作られている。本来はキレイに曲として繋がるタイミングがあるが、ゴールした瞬間に遷移するためリズムやメロディに多少の違和感はある。ただしその対策として、リズムを常に一定にする、シンプルなコード進行にする(短い循環コード)などの工夫がされており、プレイに夢中になっている分には気にならない程度に抑えられている
ゼルダの伝説 時のオカリナ - 迷いの森
ロンロン牧場の例と同様、ゲーム世界に音楽が存在することを示唆する演出。サリアが森の奥でオカリナを奏でているため、森の奥へと続く道(正解ルート)から音楽が聴こえてくる。リンクのいる位置や向きで音量変化やパンニングが行われる。ただしこれらはサリアが森の奥にいるとき(サリアの歌を教えてもらうタイミング)のみの仕様であり、サリアがいないときは普通に曲が流れている。またゴロンシティから迷いの森へ続く通路からは曲が聴こえてくる
ゼルダの伝説 時のオカリナ - カカリコ村
曲としては同じだが、子供時代と大人時代で使われている楽器が違う。子供時代は伴奏がギター、メロディがハーモニカとオカリナ、大人時代は伴奏がストリングス、メロディがファゴット、ピッコロとなっている。子供時代がのどかな村を思わせるのに対し、大人時代はそこから発展した様子が表現されている。また、大人時代のストリングスは神トラを彷彿とさせる。
ゼルダの伝説 時のオカリナ - ハイラル平原
今回の大目玉。作曲した近藤浩治さんが何度も行き来するフィールド曲で最初から同じフレーズが流れるのは避けたいと思い、考え出したアイデア。それが8小節のパーツを20個用意し、それらが前後で綺麗につながるようなコード進行にするというもの。そのパーツの中にも通常 - A~K、静止 - A~D、戦闘 - A~Eという3つの分類があり、リンクの行動・状況によってそれぞれのパーツへ遷移する
イントロは固定で平原で朝を迎えた場合は太陽の歌のフレーズを含む16小節が流れ、エリア移動で平原に来たときは前8小節がカットされたショートバージョンが流れる
遷移の条件判断は8小節目が流れている途中で行われる。ざっくり説明すると動いているときは通常、止まっているときは静止、戦っているときは戦闘に遷移する。同時に条件を満たした場合には戦闘 > 通常 > 静止の優先順位で遷移する。詳しい遷移の条件については下記の遷移の条件一覧を参照してください
静止 - Aと戦闘 - Aだけ扱いが違い、他の状態すなわち静止 - Aなら通常と戦闘、戦闘 - Aなら通常と戦闘から遷移した直後のみ流れる。以降はA以外のパーツへランダムに遷移する。part1.5で図を用いた解説を行っているのでそちらも合わせてご覧ください
遷移の条件一覧
- 移動中 - 通常 | 歩き、走りに関わらず通常に遷移
- 一人称視点 - 静止 | パチンコ、フックショット、弓も同じ
- 盾構え - 静止 | 動かしていても変化なし
- オカリナ構え - 静止 | ビン使用も同様
- メニュー画面 - ? | 画面を開いた時点の状態に依存
- 回転斬り構え - 通常 | 動いているかは関係なし
- 崖捕まり - 通常 | 止まっていても通常に遷移
- Z注目 - 通常 | 動いているかは関係なし
- エリア移動 - 通常 | 動いているためか通常に遷移
- 泳ぎ - 通常 | 陸上と同様に通常に遷移
- 剣攻撃 - 通常 | ダイゴロン刀、メガトンハンマーも同じ
- 梯子移動 - 通常 | 止まっていても通常に遷移
- 敵接近 - | 完全に距離に依存
- 水に流される - 静止 | スティックに触れなければ静止
- マメの葉移動 - 静止 | リンクが動いていないため静止
- エポナ静止 - 静止 | リンク同様静止に遷移
- エポナ移動 - 通常 | リンク同様通常に遷移
- エポナ乗り降り - 静止 | アクション中だが通常に遷移
- 水底静止 - 静止 | 陸上と同じ
- 水底移動 - 通常 | 陸上と同じ
- ESSポジション - 静止 | 移動していないためか静止に遷移
- ディン・フロル・ネール - 静止 | オカリナやビンと同様静止に遷移
ゼルダの伝説 時のオカリナ - ガノン城
ガノンが奏でるオルガンの曲。最初はとても小さい音だが、塔を上へ登るに連れて音が徐々に大きくなっていく。距離によって変化しているわけではなく、ドア移動をするごとに音量が変化する仕様。ラスボスに向けた高揚感やあとどれぐらいで辿り着くか、ということを音量という分かりやすい要素で表現している
大まかに文章にするとそれぞれのBGMの仕様については以上のようになる。これ以外に動画で語ったそもそもインタラクティブミュージックって何?とか縦の遷移・横の遷移の話は割愛してしまったがそれらについてはもっと詳しくわかりやすく語った記事等がネットに転がっていると思うので各自探してみてください
参考サイト
・任天堂の近藤浩治氏、「マリオ」、「ゼルダ」のサウンドを語る。インタラクティブなゲーム音楽を作る多彩な手法
https://game.watch.impress.co.jp/docs/20070308/kondo.htm
・社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』サウンド 篇|ニンテンドー3DS|任天堂
https://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/aqej/vol1/index.html
・『ゼルダの伝説』に見るゲーム音楽の鳴らし方と演出の工夫 ~物語の世界とリンクするBGM~ | Acua Piece
https://acua-piece.com/post/181399662155/diegetic-music-in-legend-of-zelda